第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
六振りも驚き「すまん」「悪かった」と口走るのを見て、険しい表情を崩さない一期に、審神者がようやく口を開いた。
「一期一振、そこまで。十分彼等には驚きになったであろう」
「え…」「は…」途端目を丸くして、何が起きたのか理解が出来ていない六振りと包丁と乱の前で、一期は表情を緩めて刀をかちりと鞘へ納めた。
「主殿には敵いませんな」
「おぬしら驚きすぎよのぅ。一期はハロウィンの驚きを、おぬしらに与えただけよ」
からからと扇子を広げ、口元を覆い隠しながら審神者が笑い、一期もくすくすと笑う。
「すみません、弟たちを驚かされたのが癪でしたので、お返しさせていただきました」
「あ…なぁんだ、いち兄、本当に乱心したのかと思ってびっくりしちゃった」
乱が大きく息を吐きながら、驚いたと胸を撫でおろす。
「俺も驚いたぞ。主さんが人妻だったら驚いて抱き着いていたぞ」
包丁の言葉に反対に一期が慌てる。
「何を言ってるのです、包丁。主殿に迷惑のかかるような発言はおよしなさい」
「えー、どうして?主さん、だめ」
包丁の甘える態度に審神者が笑う。
「おぬしの好きな人妻でないぞ?それでも良ければ来るが良い」
「わーい、やったぁ」
このやり取りにぽかんとして見ている六振りだったが、ようやく燭台切が「成程…一期くんに謀られたということか…」と呟いてようやく状況を理解していた。