第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
「ふむ、では、おぬしがあの短刀を連れてきたという事か」
審神者の前で二振りの鶴丸、二振りの大倶利伽羅が正座して説明をしていた。
横に燭台切と太鼓鐘も座っている。
長谷部も自分が近侍だから、と話しを聞く事を望んだが、審神者が「後で説明する」の一言で下がらせてしまった。
「それにしても、他の本丸の鶴丸と大倶利伽羅がこの本丸に来ていたとはのう…あの時間遡行軍の短刀の気配に気を取られ、二振りには全く気付かなんだわ」
審神者は手にしていた扇子を広げて笑った。
「主、今回の事は鶴さんと伽羅ちゃんだけでなく、ぼくも関わってるんです。だから罰を与えるならぼくも受けます」
燭台切が審神者に向かって頭を下げると、審神者はぴたりと笑うのを止めた。
「罰とはなんぞ。なかなか面白いものを見せてもろうたが、罰をおぬしらに与えなくてはならないような事、おぬしら何もしておらぬだろう」
審神者は扇子をぱちりと閉じると続ける。
「おぬしらのやった事はハロウィンとやらの催しのひとつであり、たまたま近くの本丸から鶴丸と大倶利伽羅が遊びに来ただけの事。ついでに助けた時間遡行軍の短刀を連れてきてしまって、あやつらが短刀を引き取りに来た、そうではないのか?」
審神者の言う事に、燭台切は「主…」と嬉しそうに頭を下げる。
「ま、しかし」と、ぱちりと扇子を鳴らして審神者は口を再度開き、その場の刀剣たちは何を言われるのかと構える。
審神者から言われたのは、ある意味、審神者に怒られるより怖いと思うものだった。
「包丁と乱に悪さはしたらしいからな、一期一振に怒られるのは覚悟しちゃれ」