第29章 Happy Halloween !　〔伊達組〕

鶴丸から再度短刀を受け取った審神者は、笑いながら言う。

「おぬしらは短気よの。この短刀に何もせねば向こうも何もしまいよ」

その言葉の通り、時間遡行軍からは一体の打刀が表れると、静かに上から本丸の庭へ降り立った。

抜刀した刀剣たちが降り立った時間遡行軍を囲もうと動き出すが、審神者が彼等を止める。

「動くな、何もするでない」

そのぴしりと威厳のある声に長谷部たちはその場で動けない。

その中を短刀を連れた審神者が、庭へ降り時間遡行軍の近くまで歩いて行く。

近くまで来ると審神者は短刀に優しく言った。

「さ、迎えが来ておる。おまえはそちらにお帰り」

「ふしゅーん」

短刀は審神者の言葉に小さくひと鳴きし、審神者に顔を擦り寄せると、審神者の手の中から離れ迎えの打刀へゆらゆらと飛んでいき、打刀の手に収まると打刀が審神者に向かって深々と頭を下げた。

「うむ、おぬしが離れたらまた結界を張る」

打刀は軽く頷くと、短刀を手にしたまま上へ吸い寄せられるようにあがって離れて行った。

それを見て審神者は印を結び結界を張り直し、抜刀したままの刀剣たちに振り返って言う。

「おぬしら、もう刀を納めよ。あれらは帰っていき、本丸には何も被害はない…鶴丸、待ちや。おぬしには説明をしてもらおうぞ」

鶴丸が逃げようとしたものの、審神者にしっかり見付かってしまい、「こういう驚きは要らないけどな」と苦りきった表情を見せた。