第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
「あ、おはようございますぅ、鶴丸さん、大倶利伽羅さん」
後ろからぱたぱたと廊下を軽やかに走ってくるのは包丁藤四郎。
「おう、おはよう。今日も元気だな」
声を掛けられ答えるのは、向こうの本丸の鶴丸とこちらの大倶利伽羅。
包丁が「お先に」と二振りを抜かした途端、大倶利伽羅が端末をそっと押し合図する。
すると包丁が通り過ぎる前の別な部屋から、短刀を首に巻いたこちらの鶴丸と向こうの大倶利伽羅が出て来て、知らん振りして歩き出す。
「…おはようございま…あれ?あれ?今さっき声を掛けましたよ、ね…?あれ?あれ?あ、鶴丸さん、何を首に巻いてるんですかって、それ、時間遡行軍の短刀じゃないですか!」
包丁が今さっき抜かしたばかりの鶴丸と大倶利伽羅が前を歩いていたのに驚き、更に時間遡行軍の短刀を巻いているのに気付き、目をこれ以上ない程に丸くして驚く。
「大変ですっ、皆さん、時間遡行軍ですっ!」
その場で叫び出し、慌てて鶴丸が包丁藤四郎の口を塞ぐ。
「ちょっと静かにしてくれ。騒がなくてもこの子は大人しい」
「がお、はご」と口を塞がれた包丁が何やら言っているところへ、先程抜かされた鶴丸と大倶利伽羅が表れる。
「よっ」
鶴丸が声を掛けると、包丁は自分の口を塞いでいるのが誰か見て、そしてまた今来た鶴丸を見、また顔を動かして口を塞ぐ隣の大倶利伽羅を見て、また今来た大倶利伽羅を見る。
「☆○□●▼★△!!!!!」
包丁は今、何が起きているのかわからず、声にならない悲鳴をあげた。