第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
きゅうと気絶してしまった包丁を抱えて、すぐ目の前の空部屋へ入り畳に横たえた。
「思った以上に刺激が強かったか」
驚かせた四振りは『さて、困ったな』といった体で包丁を見下した。
「これ、一期に絶対怒られるよな」
こちらの鶴丸が一期の顔を思い出したのか、「うーん」と唸った。
「ここの一期は弟絡みで怒らせると、本当に怖いんだ」
鶴丸がやけに詳しいので、向こうの大倶利伽羅がまゆをひそめながら聞く。
「なんでそんなに詳しいんだ。いくら同じ本丸にいるといっても、その男士が怖いかどうかは見ていないと知らな…い…」
大倶利伽羅は理由に気付いて口を片手で覆い、くるりと後ろを向くものの、背中が微妙に震えていて笑っているのが瞭然だった。
「そんなに笑うこと、ないだろうが」
こちらの鶴丸が腕を組みながら言うと、向こうの鶴丸もにやにやしつつ言う。
「あんた、相当自分の本丸でいたずらしているみたいだなぁ。一期なんて普段本当に温厚なのに、怒らせると怖いという事を知っているって事だよなぁ」
こちらの鶴丸が口をとがらせて「好き勝手言ってれば」と横を向くものの、すると首に巻いた短刀が慰めるように「ふしゅーん」と顔にすり寄ってきて、途端に鶴丸の機嫌が直る。
「お、慰めてくれるのか?いいこだな。おまえ本当に時間遡行軍か?どこかの刀剣が顕現を邪魔されて、遡行軍になっちまったって事はないのかい?」
鶴丸は首の短刀を撫でると、短刀は「ふしゅふしゅ」と尻尾らしき部分をぱしぱしと振って、可愛がられている喜びを示し、その姿がまた更に可愛いと、「やっぱり返して」「ここにいる間は俺のだ」と鶴丸同士で軽い言いあいに発展した。