第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
「俺がこいつをこうする」
向こうの鶴丸がその短刀を自分の首に、まるでタオルを首に掛けるようにする。
「俺はこれで本丸の中を歩くぜ」
向こうの鶴丸の発言に、さすがに大倶利伽羅が渋い顔をする。
「待て、それは許可出来ん。だったらこっちの鶴丸にその短刀を首に掛けさせろ。あんたたちを完全に信用したわけではない。だから、この本丸にいる間は、その短刀をこっちに預けろ」
「…ま、それもそうか」
向こうの鶴丸は簡単に納得し、短刀を首から外すとこちらの鶴丸へ短刀を渡す。
「ここにいる間は、こっちの鶴丸と一緒にいてくれよ?」
短刀は不安そうな眼差しで向こうの鶴丸を見、それでも状況を理解しているのか「ふしゅーん」と返事らしきものをした。
「短刀を頼むぞ」
「ああ、気を付けるぜ」
時間遡行軍の短刀を首に巻いた鶴丸が、こっちの本丸の鶴丸。
そうでない鶴丸が向こうの本丸の鶴丸。
見た目が違う鶴丸で区別がつけられるなと、ハロウィンの遊びを始める事とする。
「そういや、こちらの光坊は?主に夜伽かい?」
ようやく気が付いて、向こうの鶴丸が冗談めかして聞くと、「朝食の支度だよ」とこちらの太鼓鐘が言ったものの、大倶利伽羅が『そういう冗談は聞かん』といった体で怒りを瞬時に露わにし、慌てて「冗談、冗談、伽羅坊は短気だな」となだめる次第だった。