第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
ところが、口に入れたせんべいが端から少し飛び出して、大倶利伽羅の読む雑誌へ飛んで、大倶利伽羅がまゆをしかめた。
「おい、ものを食べながらしゃべるな」
大倶利伽羅が鶴丸に注意すると、鶴丸は始めて大倶利伽羅に気付いたように言う。
「おや、伽羅坊。それはすまなかった。このせんべい固くてなぁ、じいさんには食べるのは難いのかもしれないなぁ」
「…自分がじいさんなんて思っていないだろうが」
大倶利伽羅がぼそりとまゆを寄せながら言ったので、鶴丸は「伽羅坊に一本取られたな」と笑って、それでまたせんべいの破片を大倶利伽羅のほうへ飛ばし、大倶利伽羅が表情を変えずに機嫌を悪くした。
「ああ、伽羅ちゃん、機嫌悪くしないで。鶴さんもおせんべいのかけらを飛ばさないでよ」
二振りの対照的な表情に、慌てて中に入る燭台切は、大倶利伽羅の怒りをうまくなだめながらも鶴丸にも注意する。
「…あんたがそう言うなら」
なだめられた大倶利伽羅が、燭台切には心を開くようで、機嫌を持ち直した。
その様子を見て、件の話しは大倶利伽羅には燭台切から伝えないとならないな、と改めて気付き、燭台切はふぅとため息をついた。
「伽羅ちゃん、鶴さん、ちょっと話しがあるんだ」
燭台切はそう言って、二振りの座るテーブルの前に座ると、大倶利伽羅は目を細めて燭台切を見、鶴丸は金色の目を丸くして聞いてきた。
「…どうした?」
「何だい、光坊?」