第29章 Happy Halloween ! 〔伊達組〕
「おおっと、俺は悪さをするためにそっちの本丸に行きたい訳じゃないぜ。本丸は審神者と刀剣男士にとって、戦でいう本陣。そんなところを堂々と荒らしに行く程、俺はバカじゃない。ただ俺はハロウィンの驚きをせっかくだから共有したいだけなんだがな」
ふと太鼓鐘が聞く。
「まさかと思うけれど、他の本丸の鶴丸国永全てが同じ事を考えているって事は無い、よ、ね…?」
その質問に鶴丸は胸を張る。
「いい質問だ、貞坊。全本丸の鶴丸国永が同じ事を考えているに決まっているだろう!」
その言葉に大倶利伽羅が明らかに顔をしかめる。
「いいじゃあないか、いつも同じ事の繰り返しだ、驚きもたまには必要だろう?」
「おい、いつもおかしな事で驚かそうとして、主に怒られているのはあんただろう」
大倶利伽羅が嫌そうな顔をして口を開き、あまりに楽し気な鶴丸の様子に、太鼓鐘が笑い出す。
「ぶははは、鶴さん、やっぱり面白いや。でもさっきの、鶴さんが二振りいて驚かすとしても、同じ日にそっちの本丸とうちの本丸のハロウィンは出来ないよね?」
「そうなんだよ、それが問題なんだよな」
問題点を指摘され、それをあっけらかんと受け入れる鶴丸の様子に、太鼓鐘はもとより更に燭台切も笑い出した。
「本当に鶴さんはどこの鶴さんも面白いね。さっきの件は時間差で動けないかな。例えば片方の本丸が朝に仕掛けるなら、片方の本丸は夕方、とか」
「おう、それ、良いな。それなら二か所の本丸で遊べるぞ」
鶴丸が満面の笑みで言い、大倶利伽羅は『やめてくれ』と言わんばかりの表情をした。