第26章 小さな愛を育つ 〔山姥切国広〕
ぴくりと主のからだが一瞬硬直するものの、俺がかなり強硬な姿勢で出たせいか、こちらに顔を向ける事なく、横を向いて話し出した。
「自分の…成長が怖い…」
どういう意味だ?にんげんなのだから成長するのは当たり前だろう?俺は今迄見てきた審神者たちを思い出す。
みな、こどもから少年や少女、青年そして壮年から老体となり、その間に引退する者も居れば死ぬまで審神者として俺たちの主でいてくれた、彼等も当然だが成長していた。
俺のけげんそうな表情にちらりとこちらを見たのか、主はイライラとした様子で話す。
「私一人で年をとって、死んでいくのも怖い。だけどもっと今、嫌なのは、貴方がた刀剣は男性として顕現しているけど、私はこの本丸で唯一の女性。からだが成長して、女性になっていくのが正直怖い」
潔癖な主は自分のからだの成長で、今迄とは明らかに違う様子に戸惑っている、俺はそう感じた。
「成長が何故怖いのかわからないが、主は美しい。俺はそう思ってる。だからそう気に病む事は無い」
俺の言葉に明らかに動揺したように、主は顔を赤くさせる。
「俺が、今迄見てきた審神者たちの事を話そう」
俺が言うと、主はハッとした様子でようやく俺を直視した。
「主が何を思っているかは俺にはわからない。でも今迄の審神者を見ていると、この本丸の刀剣と恋仲になって、死ぬまで審神者として生きていった者もいるし、人間と結婚する為に、途中で引退して辞めていった審神者もいる。だから将来については気に病む事は無い」
一度話すのを止め、また続きに口を開く。