第4章 片恋をいつか 〔薬研藤四郎〕
「大将からの差し入れだ」
俺が先に部屋に入り、菓子を中央の茶卓に置くと、わぁっと弟たちが近寄ってきた。
「ごめんねぇ、こっちにもお菓子あるよ」
後から入ってきた大将も、盆を茶卓に置きながら言う。
「わぁい、美味しそう。いち兄の分は残したほうが良い?」
乱の質問に大将は答える。
「一期の分?こっちに別に用意してあるから、これを後で渡してくれる?この分はみんなで食べていいよ」
小さな紙袋を乱が受け取り、いち兄に渡す分を確認すると、みんなで「いただきます」とお菓子を食べ始めた。
大将はにこにこしながらみんなに麦茶を淹れてくれた。
「こぼさないように気を付けてね」
「大将が廊下で菓子をぶちまけるより気を付けると思うよ」
俺がさっきの様子を思い出してくくっと笑いながら言うと、大将は真っ赤になる。
「もう…薬研ったら意地悪なんだから…!」
そんな時の大将は可愛くてもっと意地悪したくなってしまうんだ。
「大将」
俺は麦茶を淹れ終わった大将に声を掛ける。
大将は頼まれてせんべいの袋を開けているところで、こちらを見ずに「なぁに?」と聞いてきたので俺は聞いた。