第25章 愛して強くなる 〔蜂須賀虎徹/R18〕
来た時と同様、丁寧に頭を下げて私の前から下がっていく蜂須賀さんは、このまま他の皆さんに修行に出る事を話しに行ったんだろう。
名家の出である美しい蜂須賀さんは、顕現するまでほとんど実戦が無く、時間遡行軍との戦いに出るまでに、からだを鍛えて時間をかけて特訓をし、かなりの時間がかかった。
だから、修行に出られるまでの条件が揃うのをじっと待ち続け、ようやく出られるようになった今、許可を得に私のところに来たのだ。
駄目だとは言えない。
初期刀として、私が審神者になってからずっと付き添っていろいろ教えてくれた、一番信用している刀剣だし、気持ちは伝えていないけれど私の心にずっと住み着いているかた。
演練に行くと、恋仲になっている刀剣と審神者を見掛けるけれど、蜂須賀さんの虎徹としてのプライドや、凛としながらもたおやかな雰囲気を持つあの姿を、私の穢れた浅ましいヒトの欲求で汚してはならないと強く思う。
だから、この気持ちはずっと仕舞っておく、そう、決めている。
修行に出ていた男士が無事極めて戻ってきて、二日後に蜂須賀さんも旅立つ事になった。
極めた男士が戻ってくると宴会を開いてねぎらうのが、我が本丸のしきたりというか流れ。
今回もその戻ってきたかたをねぎらう宴が始まった。
「ほらぁ、呑みなさいよぅ」
次郎太刀さんがきゃらきゃら笑いながら、極めた男士に酒を注いでいるのが遠目からでもわかる。
日本号さんや不動くん、お酒の好きな面々が彼を囲み、わいわいと盛り上がっている。
そんな様子を端から見ながら、燭台切さんや歌仙さんが作ってくれた料理を口に運ぶ。
「ん、これ、美味しいね」