第25章 愛して強くなる 〔蜂須賀虎徹/R18〕
「主、良いかな?」
部屋の前で『どうぞ』の声が掛かるまで待っているのは、蜂須賀さんだ。
「どうぞ」と声を掛けると、すらりと襖を開ける動作はあくまで優雅。
私の前に正座をし、美しい桃色の髪を後ろに流すと、両手をひざにおいて口を開いた。
「修行に出たいんだ。ようやくこの本丸も修行に出られる体勢が整って、他の刀が修行に出ているのを見て、俺も自分にもう一度向き合いたくなったんだ」
いつかは言われると思ったけれど、こんなに早く、初期刀の貴方に行きたいと言われるとは思わなかったな…
そんな思いが沸き上がるけれど、修行へ出て極めてくるのは、彼等刀剣男士にとってはとても重要な事だというのもわかっている。
だから蜂須賀さんの美しく真剣な顔を見て、私は『嫌だ』とは言えなかった。
「うん、わかった。今、出ているかたが戻ったら、次に修行に出ていいよ」
「ありがとう」
蜂須賀さんのふわりとした笑顔を見て、寂しいけれど、大切な事だし二度と戻ってこない訳じゃないから、と自分に言い聞かせる。
「気を付けてね」
「ああ、勿論。みんなに話しても良いかな?」
「ええ、どうぞ」
「じゃ、失礼する」