第22章 いつか竜宮城へ 〔浦島虎徹〕
慌てて聞くと浦島も額を片手で押さえているものの、その表情はそんなに痛いという感じには見られなかった。
「ん、大丈夫、主さんも大丈夫?」
額から手を離した浦島の顔がごく自然に近付き、私の額と自分の額をこつんと当ててきた。
瞬間、いつも可愛らしく虎徹兄弟の末っ子で甘えるのが上手な浦島が、おとこを垣間見せて私は全身が硬直してしまった。
「…お、か、え、し!」
途端また浦島の顔がいつものにこにこした少年の表情に戻り、私はからだのちからがふにゃりと抜けて、両手を床についてしまう。
「主さん?」
驚いた浦島が私を覗き込むけれど、私は先程の浦島の表情を思い出し、顔を直視する事が出来ない。
目を泳がせて大丈夫、と答えるものの、浦島は更に顔を近付けてき、真剣な顔で聞いてくる。
「本当に大丈夫?顔、赤いよ?」
「うん、ありがとう…そう?気のせいだよ」
誤魔化しつつ浦島から離れるように立ち上がりながら言った。
「じゃ、髪も直したし、部屋に戻ろうかな」
「そっか…主さん、忙しいもんね」
襖を開けて部屋を出ようとした私の腕を、浦島が引っ張って止め、それに私の心臓がどくりと大きく跳ねた。