第22章 いつか竜宮城へ 〔浦島虎徹〕
「にいちゃんに見た目も気にするように言われてるのに、主さんに見られちゃったなぁ」
参った、という表情を見せる浦島に、私は声を掛ける。
「良かったら私が直してあげようか?」
「え、ほんと、主さん。直して、お願い」
にこにこして頼んでくる浦島と一緒に、失礼しますと言って部屋に入らせてもらい、櫛とヘアスプレーを用意してもらう。
ちょっと待って、このヘアスプレー、海外のいわゆる高級ブランドのものじゃない。
すごいの使ってるのね、と思いながらドライヤーも借りて寝癖を直していく。
さらさらな浦島の髪は、あっという間に寝癖が取れ、私は櫛をいれながら言った。
「浦島、本当に髪、綺麗。いいなぁ」
蜂須賀もとても美しい桃色の髪を持っているから、蜂須賀からお手入れについて注意されているのかもしれないな、と私は思った。
「主さんだって黒髪、良いじゃん。何て言うか、えーと、清楚だよね」
浦島に清楚だなんて言われ、つい頬が赤くなる。
「そうかな。結構くせが強くて、まっすぐになかなかならないんだよ。だから毎朝ドライヤーと格闘してるし」
「ふぅん、そうなんだ」
浦島に終わったよ、櫛を返すと受け取る為に後ろを振り向いた浦島の額と自分の額が、ごつんとぶつかった。
「あ、痛、ごめんね。浦島、大丈夫?」