第22章 いつか竜宮城へ 〔浦島虎徹〕
「ん?この亀は浦島のだよね…?」
朝、起きて廊下に出た私が見たのは、廊下の真ん中をのしのしとゆっくり歩く亀だった。
亀に近寄り声を掛ける。
「ねぇ、あなた、浦島の亀だよね?どうしたの、ここで?」
勿論亀が答える訳もなく、こちらをじっと見るだけ。
「浦島のところへ連れて行こうか?」
私が更に亀に話し掛けると、亀は理解をしたのかゆっくりとこちらへからだを向けた。
「じゃ、失礼するね…」
そっと甲羅の左右に手を入れて持ち上げると、亀は暴れもせず頭をひっこめもせず黙ってそのままでいた。
私は浦島の部屋へ足を向け、襖の前で声を掛けた。
「浦島、いる?亀さん、連れてきたよ」
するとすぱーんと勢いよく襖が開き、寝癖のついた頭のままの浦島が飛び出してきた。
「かめきち!居ないからびっくりしたぞ。勝手に遊びに行くなよー」
私の手から亀を受け取り、甲羅を撫でる浦島は可愛かった。
「浦島、寝起きなの?髪の毛爆発してるね」
気付いて髪の毛の事を言うと、浦島はしまったという表情を見せる。