第21章 愛と破壊 〔加州清光/R18〕
「明日…なのね…」
浴衣の寝間着を着た主は俺の話しを聞き、きちんと座り直すと俺に三つ指をついた。
「どうぞ皆様、ご無事でお戻りください。明日、私の霊力を皆様の前で送ることは出来ません。私のちからでは届くかわかりませんけれど、この部屋から霊力をお送り致します」
その顔は俺だけへ見せるおんなの顔ではなく、あくまで審神者としての顔だった。
「うん、がんばってくるよ」
すると主から俺に近付き、俺をふわりと抱き締めてきた。
「古来より出陣前はおんなには近寄らない作法でしたね。だから戻ってきてから…」
顔をあげてこちらを見て言う主は、真剣な眼差しだった。
「何事も無くご帰還なさる事を祈っております」
その表情は俺を一刀剣としてしか見ておらず、俺も抱き締められていた主の腕を外し、座り直して雅を主としてみて、礼をした。
一緒に布団に入ったものの、そのまますぐ入眠し、その日が、来た。
俺たちはばらけて万屋に行く事とし、それでも皆が万屋に行くと怪しいので、誰にも気付かれないようにそっと本丸を出て行った。
出掛けるタイミングに合わせてくれたのか、主が短刀たちを自分の手元に呼んで遊び相手になっており、入口辺りを唐突に見に来る者も居なかった。
静かに、そっと、本丸を離れ、万屋へ急ぐ。
明石は蛍丸と愛染に菓子を買うという予定で、万屋へ先に出ていた。
明石にしては行動が早いなと思っていたが、後で聞いたら蛍丸と愛染に引っ張られたらしい。