第3章 Je Te Veux 〔大倶利伽羅/R18〕
瞬時に混乱する頭の中で整理すると、思い当たるのは、ただ一人、鶴丸。
大倶利伽羅に嘘を教えた?
大倶利伽羅は私に気付く事なく、洗い場に座るとからだを洗い出した。
腕から肩にかけて、倶利伽羅龍の彫り物が左側にある。
広い背中は筋肉質でしっかりと締まって細くなる腰に、後ろ姿なのにドキリとさせられる。
このまま静かにしていれば気付かれないよね?
私はゆっくり隅に移動し、気付かれないようになるべく頭を低くした。
しばらくしてからだを洗い終えた大倶利伽羅は風呂に漬かるが、これだけ広いのに、何故私の近くにやって来るのだろう?
そして隠れる場所も無く、ようやく大倶利伽羅は私に気付く。
「…主?何故、そこに居る?」
「…たぶん、鶴丸に嘘をつかれた」
私がむっすりとして言うと、大倶利伽羅はまゆをひそめる。
「どういう事だ?」
「私は自分がお風呂に行くから、大倶利伽羅には書類の確認を後でお願いします、と伝えてもらうよう鶴丸に頼んだの」
「…俺は、鶴丸から、後で頼みがあるから今のうちに主が風呂に入っておくように、と伝言を受けた」
鶴丸にやられた…どうしてこういういたずらを平気でやるのかしら?
見た目は若くたって、刀としての年齢は私より断然上なんでしょう?