第19章 貴方を知りたい 〔同田貫正国〕
するとふ、と吹き出す音が聞こえ、同田貫さんが横を向いて肩を震わせていた。
「あの…同田貫さん…?」
おそるおそる声を掛けると、何故か同田貫さんは口に手をあて笑っていた。
「私、何かおかしい事を言いましたか?」
私に隠れるように笑う同田貫さんに、私はつい肩に手をかけ揺さぶると、笑うのを止めた同田貫さんは言った。
「俺は当たり前の事を言っただけだ。それなのにぽかんとした顔でこちらを見られては笑うしかないだろう」
「でも…おっしゃる事はわかりますけれど、誉を取って何も望みが無いというかたは、あまりいらっしゃらないなぁと思ったものですから…」
私が理由を言うと、同田貫さんは続ける。
「あぁ、確かに誉を取って褒美をもらいたい者はいるし、俺は否定しない。そういうやつと俺が根本的に考えが違うだけだ」
「そうなのですね…」
「…しかし…そこまで褒美を言うなら…」
同田貫さんは私のほうへずいと近寄り、片手で私のあごをすくってご自分のほうへ私の顔を向ける。
私はまたもやぽかんとしたまま、同田貫さんの傷をおおきくついた顔を見つめると、同田貫さんのもう反対側の手が私の唇をなぞった。
「この唇をもらうというのも褒美にあるのか?」
にやり、と笑みを浮かべる同田貫さんに、私はようやく意味を理解し、急いで言う。