第15章 出陣の理由 〔山姥切国広/R18〕
俺は菓子切りでカステラを一口大に切ると、口に運びつつ言った。
「それでも溜めてしまったのは私の不注意ですから…ありがとうございます」
主は丁寧に再度俺に礼を言うと、しばらく二人でカステラを無言で食べる。
「なぁ…主の言い方は誰にでもそんなではないだろう?」
俺は思っていた疑問を口にした。
やたら丁寧な言葉遣いは誰に対してもだと思っていたが、そうでもない。
短刀や脇差たちには完全に敬語ではないし、俺と同じ打刀には敬語を遣っているのもいるがそうでないのもいる。
大太刀、槍、薙刀も打刀同様、敬語とそうで無い者が混じっている。
どうみても俺は打刀でも敬語を遣われているほうだ。
それを聞いていると、俺は偽物だからそういう態度を取られているのかと思う。
「え…偽物…そんな事考えた事もありません」
「だったらどうして俺には敬語で話すんだ?」
「え、えーと、な、ぜ、でしょう…?」
自分でもわからないと首を傾げる主に、俺はまゆをひそめる。
「わからないのに、俺には敬語か。主がそれで良いなら良いが、俺には敬語を遣われると主との距離を感じるんだが」
俺の言葉に慌てる主。
「え…距離なんて…ごめんなさい、そんなつもりはないのですけれど…では、敬語を外しても良いですか?」