第12章 相容れぬ世界 〔斬鉄剣/R18〕
この本丸を意識しないと今度はこちらへ戻って来られないが、顕現したばかりの斬鉄剣に戻れるかどうかわからない。
「もともと違う世界からきたかただから、戻れなくても当然かもしれません」
いつの間にか雅が廊下に来ていて、斬鉄剣が意識を飛ばすのを見ていたらしい。
「主、見ていたか」
「おや、どうした、その姿は」
雅は本丸内で過ごす時のジャージ姿ではなく、いわゆる審神者の仕事をする時に着用する白い着物に緋袴の姿だった。
「刀の持ち主のところに戻れたなら、彼にとっては良いんじゃないでしょうか」
中へ入ってきて輪になっていたすぐ近くのテーブルの側に座ると、雅はテーブルに頬杖をついた。
「最初に言ったでしょう?彼は架空の話しに出て来る侍の持つ刀だって」
「言っていたけれど、その架空の話しって…」
「ちょっと違うけど物語みたいなものかな。本の中はこの世界と違う世界でしょう?」
「じゃあ斬鉄剣殿は物語の世界から来たという事か?」
「ちょっと違うんだよね、でもまぁそんなところかな」
説明に難しい、と雅は言う。
ほんの少し全員が無言になったところで、先程斬鉄剣が座っていたところがきらきらと輝き出した。
「なんだ?」