第12章 相容れぬ世界 〔斬鉄剣/R18〕
斬鉄剣は廊下にきちんと座ると、丁寧に両手をついて頭を下げる。
それにつられ、何人かが頭を下げて「ああ、よろしく」と声を掛けた。
「それじゃあ長谷部さん、お手数かけて申し訳ないのですけれど、彼の事しばらく面倒見てあげてくださいませんか?」
「主命とあらば」
斬鉄剣の面倒を頼まれた長谷部は、いつも通りの台詞を言うと、主はにっこり微笑んで長谷部に何やら耳打ちしたが、その内容までは誰にも聞こえなかった。
主が部屋へ戻った後、長谷部はひとつずつ斬鉄剣に本丸の中を説明をしていく。
「ここが風呂場だ。適当な時間にみんな入ってる」
「ここが台所。食事は当番制で順番に作っていくのだが…料理は出来るのか?」
長谷部が聞くと、斬鉄剣は首を傾げる。
「さぁ…どうでござろう…拙者の刀の主君が料理をしているのは見た事が無いでござる」
「刀の主君って誰?」
「石川五右衛門殿でござる」
「いしかわごえもん!?」
斬鉄剣の持ち主は大泥棒の石川五右衛門なのか、と一緒にいた者たちが騒ぐ。
「しかし…石川五右衛門の刀が斬鉄剣とは聞いた事がないぞ?」
誰かが疑問形で言うと斬鉄剣も答えた。
「拙者の持ち主は、大泥棒の石川五右衛門の十三代子孫の石川五右衛門殿でござる」