第2章 素直な気持ち
「んー。気にならないって言えば嘘になるかな。」
…。隆二って本当に素直。そこが好きなんだけど、時々嘘をついてほしくなる時がある。
「しかも、あの男ちゃらそうだし。大切にされてなさげだしなぁ。」私の気持ちも知ってか知らずかブツブツ言っている。
「そんなに心配なら、隆二がもう一度大切にしてあげれば?」
いい加減嫌気がさした私は思わずこんな事を言ってしまった。私の、悪い所。思ってもない事を言ってしまう。
「…。おまえ、それまじで言ってるの?」隆二の表情がみるみる変わっていった。
どうやら地雷をふんだみたい。
引けなくなった私。
「だって、最近よく口ずさんでるじゃない。昔の恋人と戻りたいって内容の曲。」
「別に、深い意味はねーよ。」
「じゃあ、無意識なんだ。戻りたいって。」
「お前。いい加減怒るぞ。俺が、どんな気持ちでプロポーズしたと思ってるんだよ。指輪、またしてねーし。したくねーなら捨てちまえよ。」
「したくない訳じゃないもん。」
「じゃあ、なんだよ。お前こそ、テツヤさんの事まだ引きずってんじゃねえの?」
「…。最低。」頭に血が上った私は部屋を出る。
「どこ行くんだよ。」隆二に腕をつかまれる。
「まだ時間あるし、一緒にいたくないから温泉に行ってくる。」
「勝手にしろ…。」
手を振りほどくと、隆二はまた畳の上に寝転んだ。