第3章 魔女と銃弾
運転中
今回の作戦をライに話したとき
初めてしっかりと彼の声を聞いた気がする
私はもっと無口な男だと勘違いしていたらしい
その後
何度か彼からの視線を感じた
私の顔に何か付いているのか・・・
気になって
口元に手をやる
大丈夫、たぶん何も付いていない。
のん気になんなことを考えながら車を走らせていると
彼を降ろそうと考えていたポイントに到着した。
『ライ、ここで一旦私と別行動で。強行突破でも任務さえ遂行できれば問題ない。お前はその辺のビルから狙っていれば良い。潜んでいる場所はだいたい分かるから私が合図するまで絶対に動くな』
車を止め、彼の方に顔だけ向け
最終確認のように伝える。
一瞬、彼の顔が曇った気がした。
気がしただけかもしれない。
ここまで、表情が読めない人間は久しぶりだ。
「合図とは、どんな合図だ?」
静かにエンジン音が響く中、彼が言った。
そういえば、どんな合図をするか伝えていなかった。
単独行動に慣れ過ぎてしまってしまっているせいだ。
さて、どんな合図にしようか・・・・
分かりやすくて
一瞬でできる合図・・・・
『そうだな・・・私がお前の方を指差す。これにしよう』
彼の眉が少し動いた。
恐らく、これは驚きの表情だ。
「本当に俺の居場所が分かるのか?」
後部座席からライフルバッグを肩にかけながら問いかけられる。
『分かるさ。私は魔女だ』
悪戯に笑って見せた。
嘘は言っていない。
冗談でもない。
この世界の人間が大好きな【真実】だ。
「そうか、では合図を待っている」
そう言い残し、彼は静かに闇へと消えた。
この身体の事も
後、数十分もしないうちに
彼に知られるであろう
もう、考えることはしない。
逆に
面白いことになるんじゃないか
という好奇心まで沸いてきた。
あれだけ面倒だとなにこれ考えていた自分がバカみたいだ。
自分に笑ってしまう
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魔女と銃弾 ②人間が好きなもの