第3章 魔女と銃弾
アイリッシュ
変な女だ。
これほどめちゃくちゃな女とは会ったことがない。
死にに行くような無謀な策の次は
俺を指差すという合図
まったく
どこまでも何を考えているのか分からない。
その言葉への驚きを隠すのが精一杯だ。
車を降りると
周辺の建設途中のビルが目に付いた
人気がなく
高さもちょうどいい
見晴らしも悪くなさそうだ
自然と吸い込まれるように足が進む
それにしても、あの女の闇は深い。
この俺が調べてもその正体は謎のままだ。
さらに
かなり前からこの組織に所属しているのにも関わらず
なぜ、老いていないのか・・・・。
謎は深まるばかりだ。
この任務が終わったら
ゆっくりと調べ直そう
何か重要な手掛かりを見逃しているのかもしれない。
取引の場所が綺麗に見渡せる屋上付近に腰を下ろすと
狙撃の準備に取り掛かる。
その時
ふと頭を過ぎった女の言葉
『そうだな・・・私がお前の方を指差す。これにしよう』
どのビルの何階に潜んでいるか
俺しか知らない。
その合図
本当に実行できるのか?
いざとなれば、合図なしでも狙撃しよう。
謎が多すぎるあの女、まだ死なれては困る。
さて、こちらの準備は整った。
ライフルスコープを覗くと
相手のボスであろう人物と対峙する女が見えた
その姿は余裕そのもの
顔は薄っすらと笑みを浮かべているようだ
どこまでも
変な女だ・・・と
こちらも無意識に口角が上がる。
おもしろい
その合図とやら
やってもらおうじゃないか
魔女さん
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魔女と銃弾 ③深まる謎