第13章 魔女と賭け
人間は孤独には勝てない
何かを分かち合う者がいなければならないのだ
『そうだな…』
今は亡き、出逢いを思い出しながら
天を仰ぐ
最後に浮かんでくるのは
あの人とジンと零と赤井だ
そうだ
淋しかったのは過去であって今ではない
きっと赤井は私が淋しさを認めるのを待っているだろう
馬鹿な男だ
私が認めるわけないだろう
淋しかったのはこれまでの事
今は違うのだ
大きく息を吐きいつもの自分を取り戻した。
頬杖をつき赤井の方へ顔を向ける
しかし、瞳に溜まっていたものは瞬きをした瞬間
こぼれ落ちた。
『なぁ赤井…私にはお前が居てくれるのだろう?』
「あぁ…もちろんだ」
私の頬に手を当て
溢れた涙をその温かな指で拭いながら赤井が言う。
それから
唇が触れるまで時間は掛からなかった。
車内を満たす卑猥な音
熱くなる体と激しさを増す接吻
『…はぁ…っ素直と…言うものに…なってみたぞ?』
酸素を欲しながら言葉を紡ぐ
激しさのあまり呼吸を忘れていた
「あぁ、感謝する」
息1つ乱れていない赤井は
私の腰に手を回し抱き寄せながら囁いた。
好意を寄せる相手は他に存在するはずなのに
卑怯なヤツだ。
これも私たちの組織を壊滅させるための偽り、演技なのか
分からない
分からないが
この偽りが
こんなにも心地よいなら
赤井
お前となら
もう少し、この茶番劇に付き合っても良いだろう