第13章 魔女と賭け
冗談だ。と彼女は今笑う
しかし
その顔は淋しさを帯びた哀しげな笑顔だ。
「そんな顔を見せて良いのか?」
『ん?そんな顔とはどんな顔だ?』
どうやら無自覚らしい。
首を傾げ、自身の顔を確認するように触っている。
「笑ってみせたつもりだったようだが…俺には泣いているように見えた」
『ふん、馬鹿な。そんなはずはない…』
アイリッシュは不服とばかりに鼻を鳴らし眉をしかめる。
やはり…他人に自らの弱さをみせようとしない彼女なら
必ずそうすると予想していた。
きっと今までそうして生きてきたのだろう
「君に死なれては困る。これは勝手な俺の思いだ。願いと言ってもいいだろう」
『はぁ…勝手に願うな。私が死ねなくなるじゃないか』
鬱陶しいとばかりに言い放たれた言葉とため息
薄い笑みを浮かべやれやれと首を振る仕草が下手な演技のように見えた。
「そうだな。しかし、俺はまだ死んでほしくない」
『全く、ワガママな男だ』
「ワガママなのはお互い様だろ?」
相変わらず強がりな女と言ったところか…
見え隠れする本心を決して語らない
「ここはひとつ、素直になったらどうだ?」