第12章 魔女と夜空
いつだって
沈黙を破るのは咲哉だ。
『降谷零としての質問がないなら、バーボンとしての質問はないか?』
同じ自分でも
組織の一員として
バーボンとして聞きたい事
「あの時、僕の知らないところで何があったんですか?」
この半年、ずっと気がかりだった
初めて任務を共にしたあの日のこと
『あぁ、あの日か…簡単に言うと暗殺対象は既にこちらの情報を把握して返り討ちにするつもりだったようだ。そして、本当の狙いは組織の魔女である私を捕らえること。裸だったのは身体検査をされたからだ。その後、暗殺対象と2人きりになり不老不死を確認するためと私は頭を撃たれた。その間にどうしたら事故に見せかけて殺 す事ができるか考え…その結果があれだ』
「無茶苦茶です…」
あまりにも無謀なやり方。
自身が不死の体であることを分かっているからこそできるやり方なのか…
呆気にとられてしまう
『私はあのまま館と共に焼け死ぬつもりだった。まぁ、お前に助けられるまでに何度か死んではいたがな…再生する力の方が早くて動けたんだ』
「焼け死ぬって…苦しくはないんですか?」
『そうだな…撃たれたり斬られたりするより、炎で焼かれる方が苦痛は激しい。そして回復にも時間がかかる。だから半年程休養を取っていたんだ』
「そこまでして…何になるんですか?貴女には何が残るんですか?」
彼女のやり方には反対だ。
いくら不死の身といっても
彼女にはそれ相応の痛みがある。
それを分かっていながら何故自分を傷つけるやり方を行うのか…
何度も死んで
何になるのか…
何が残るのか…
『…また、死ねなかった…それだけだ…』
いつもはっきりと言葉を発する彼女とは違う
弱く悲しげな感情の込められた言葉。
その表情を見る事ができないが
初めて咲哉の弱さを感じた気がした。