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とある組織の黒い魔女 【名探偵コナン】

第12章 魔女と夜空




「利用…ですか?」

『そうだ。私には自分を証明できるものが何もない。だから、裏の社会でしか生きられない。零、お前なら分かるだろう?』


確かに咲哉の言う通りだ。
現代において戸籍というものが全ての証明。
それがない彼女は表社会で生きていくことは難しい。
だが、今の自分になら戸籍がなくとも生きていける環境を整えることくらいできる。


「咲哉が言うことは確かに分かります。しかし、組織に頼らなくても…僕なら貴女を『それは断る』

「何故ですか!?」

つい声が大きくなり
ハンドルを握る手に力が入る

『私は死ねない。何百年も同じ人間が生きていたら不自然だろう?』

僕を諭すように
ゆっくりと咲哉は答える。
言い返せなかった…
冷静になって考えれば分かること
不老不死ということは
老いることなく死ぬことなく生き続けるということだ。
死ぬ事がない。


「すみません……」

『気にするな。零のせいではない。死ぬことができない私が全ての元凶だ。さぁ他に質問はないか?』


重苦しい空気を和らげるように
咲哉は穏やかに次の質問を要求した。
次の質問なんて…もうこれ以上聞いてしまったら…


信号が赤に変わり
車が停まった。
すると、彼女の手がそっと伸びてきた。
重なる手
暖かく柔らかい手の感触。

咲哉の方に目を向けると優しい微笑みがあった。

『構わんぞ?何を聞かれても答えてやる』

「……本当に…貴女には敵いません」


一瞬でも疑いの目で彼女を見てしまったことを後悔する。
どうして
どうしてこんなにも

「貴女は僕に……優しいんですか?」

絞り出すように本音が溢れた。
歯を食いしばり、俯くことしかできない。

『どうしてだろうな…お前は私の特別だからじゃないか?』

貴女の特別とは…一体なんなのか…
僕の都合が良い方に捉えても良いのだろうか…


『零、信号が変わったぞ』

「っ!」

咲哉の言葉に
慌ててアクセルを踏み車を走らさせた。


もぅ、冷静ではいられない。
いくつもの感情が…頭を巡る

全て咲哉への感情


今思えば
本当に一目惚れだった。

年月が経っても変わらない
一途な一目惚れだ。
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