• テキストサイズ

とある組織の黒い魔女 【名探偵コナン】

第12章 魔女と夜空


真実を知る。
それは残酷な事。


愛車の助手席の扉を開け彼女を迎える。
丁寧にドアを閉め、運転席へと向かう間に深呼吸をした。
これから
どんな残酷な真実があろうとも受け入れる覚悟をするためだ。

運転席へ乗り込みハンドルを握る。

「どこか行きたいところはありませんか?」
『特にはないが…そうだな…景色が綺麗なところが良い』
「…分かりました」

彼女が好みそうな景色の綺麗な場所
選択肢は一つしかなかった。
エンジン音だけが聞こえる静かな車内
自分の鼓動だけがうるさい。

『何も聞かないのか?全て真実を答えるぞ?』

窓越しに流れる風景を眺めながら発せられた余裕を感じさせる彼女の言葉。
通常、この状況では追い詰められる立場なのに
追い詰める立場である自分の方が動揺している。

「では、まず一つ目、咲哉は何故あの組織に?」
『何故?と言われてもな…。拾われただけだからな』
「拾われた?」

『あぁ、気付いたら拾われていた。ただ、それだけだ。目を開けあらそこにあの人がいた。あの人は私がこの時代を生きていくために必要な物を全て与えた。コードネームであるアイリッシュも与えられた物の一つだ』

孤児を拾い組織の駒として使う…というのはよくある話だ。
しかし、彼女の言い方では何か表現のしようがない不自然な感覚を覚える。

「それは…何年前の話ですか?」

『そうだな…30年…いやもっと前か…50年か?忘れてしまったよ』

気づいてはいた。
幼い頃に出会った咲哉と今の咲哉、見た目が全く変わっていない
現代の医療技術を持ってしてもこれほどまでに若い肉体を保ち続けるのは困難なことだと
気づいてはいたが…そんな小説のような話が現実にあるはずがないと自分の中で否定し続けていた。

「組織の噂で耳にした事があります。組織の中に不老不死の魔女がいると…それは貴女ですか?」

馬鹿げた質問だ。
普通だったら笑い飛ばされるだろう。

しかし
彼女は笑わなかった。
それは無言の肯定

『私はもう自分の年齢すらわからない。もう何年生きて何回死んだかなんて覚えていない。笑えるだろう?それをあの人は知っている。私はあの人に利用されているんだ。だが、私はそれを分かっていてあの人を利用している。この時代を生きていくためにな』

咲哉は約束通り淡々と偽りなく語った。
/ 88ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp