第11章 魔女と太陽
彼女と向かい合った。
緊張しているのか
それとも言葉を選び過ぎているせいか
沈黙が流れる。
『元気そうで良かった』
先に口を開いたのは彼女だった
「咲哉こそ、元気そうでなによりです」
彼女に合わせて笑みを作る。
と同時に今置かれている自身の状況を把握した。
この場にいる全員の注目を集めている。
ただ、この建物に足を踏み入れただけで話題になる彼女と
知人として話している自分。
これは確実に明日から風見を始め多種多様の人物から質問責めに合うだろう。
場所を変えなければ
『私の心配はいい。自分の心配をしろ』
どうやら彼女もそれを察したようだ。
「一度、デスクに戻ってすぐに降りてきます。お時間大丈夫ですか?」
『長期休暇中だ。時間ならいくらでもある』
長期休暇…初耳だった。
あの組織の中でそんなものが存在するのか…
いや、彼女だけが特別なのだろう
これまでのジンやベルモットの言動から考えると間違いなく彼女は組織の中で特別だ。
この先、この国を守るために…
組織を壊滅させるために…
いつか彼女をこの手で……
殺める事になるかもしれない……
悪夢のような未来を考えながら急いで帰り支度をする。
案の定
後輩や同僚から質問の嵐
出会いはどこか?
彼女との関係は?
彼女の名前は?
出身は?
年齢は?
恋人は?
どんな人なのか?
答える気はない。
そもそも僕が答えを知らない質問の方が多い。
僕だって知りたいことばかりなのに…
「また、今度」
と全ての質問を先延ばしにし
彼女の待つロビーへ向かった。
『零、早かったな』
「咲哉、行きましょうか」
咲哉の手を引き
職場を後にする。
ここからは2人きりだ。
さて
どんな話をするか
彼女はどんな話をしてくるのか
あれほどまでに咲哉に逢いたいと望んだいた。
しかし
何故。こんなにも不安になる?