第11章 魔女と太陽
外に出ると日は暮れ
薄暗くなっていた。
『零、いつまで手を握っているんだ?私は迷い子ではないぞ?』
「っ!!」
僕をからかうように握っている手を目線の高さまで上げ
ニヤリと笑う咲哉
一瞬にして顔に熱がこもり慌てて彼女の手を解放する。
しばらくの沈黙が流れ
先に口を開いたのは咲哉だった。
『すまないな、急に押しかけてしまって』
「構いませんよ。ところでどうしてこんなところまで?』
今の彼女とはバーボンとしてしか接していないはずなのに
何故、僕の居場所が公安だと分かったのか。
問いたい気持ちを抑えきれない。
『これを返しに来た』
差し出された紙袋。
受け取り中身を確認するとあの時咲哉にかけた上着だった。
綺麗に整えられ、汚れ一つない。
「これだけのために?」
『あぁそうだ。いけなかったか?』
不思議そうに僕の顔を見つめながら彼女は言った。
他には何もないのか?
僕を探りに来たのではないか?
疑心の念が浮かぶ。
彼女は組織の人間だ。
しかし
心のどこかで喜びの感情が見え隠れしているのは確かだ。
咲哉が自分のために足を運んで来たという喜び
「半年も前の事だったので、すっかり忘れていました」
紙袋を受け取り上着を広げる
盗聴器や発信機が隠されていないかを確認するためだ。
組織との関係がある以上仕方がない…
胸が苦しい。
『安心しろ。お前に不都合な事はない』
核心をついた言葉に肩が揺れる。
「すみません、職業病でつい」
『構わん。身の安全のため当たり前の事だ。それより、私に聞きたいことがあるのだろう?』
まるで心を読まれているようだ。
2人の間を張り詰めた空気が支配する。
『頭の良いお前の事だ。考え過ぎて聞きたい事がまとまらないようだな』
僕の事を気遣ってくれているのか
幼い頃に見たあの笑顔
「かっこ悪いですが、その通り…ですね…」
彼女につられて僕も笑う
苦し紛れの苦笑いだ。
「とりあえず、僕の車で良かったら話しながらドライブでもいかがですか?」
『あぁ、でも良いのか?お前の両手がふさがるぞ?』
「大丈夫です。今の貴女は咲哉でしょう?」
『ハハッ!そういうことか』
これで自分も少しだけ余裕を見せる事ができたか…
いや、まだだ
これからが本題だ。