第11章 魔女と太陽
橙の太陽が西に傾き
家路に着く人々で道が賑わってきた頃
やっとの思いで目的地へと到着した。
日傘をたたみ、自動ドアを抜け
周りを見渡す
セキュリティーが厳しい
面倒な場所だ。
そして
視線を感じる
好意の目か
疑惑の目か
どうせ奥までは入れないのだから
そのへんのヤツに…
たまたま通りかかったメガネの男性に声を掛けた。
『すまない、ここにいる降谷零という男に会いたいのだが…』
「ふ、降谷さんにですか!?」
運が良い
零の事を知っているようだ
「失礼ですが…お名前は?」
『咲哉だ。彼に咲哉が来たと伝えてくれ。私の名前を聞けば彼はすぐに分かる』
「…少々お待ちください…」
かなり悩んだであろう
メガネの男にしてみれば素性の分からない相手だ。
怪しんで当たり前だ。
隅の椅子に腰掛けるよう促され
言われた場所に
言われた通りに座る
零の立場もあるからな
一応、それなりの行動を取らなければ…
だが
そう思えば思うほど
1分1秒が長く感じる。
あの任務から
零と一度も会っていないどころか
連絡すら取っていない。
メガネの男が消えた方向から
騒がしい足音が聞こえる
間違いない零だ。
椅子から立ち上がりゆっくりと視線を上げる
自然と笑みが溢れた。
『久しぶりだな、零』