第10章 魔女と炎
ベルモットと合流する
もうすでにのアイリッシュ姿は消えていた。
「ベルモット、アイリッシュは?」
「彼女は単独行動が好きなの。いつもそう、私を置いて
気付いた頃には終わってるのよ」
淋しげな瞳で居なくなったアイリッシュが消えたであろう方向を見つめるベルモット
こんな表情を見たのは初めてだ。
その後、
ベルモットと共にターゲットを探すが
やはりなかなか見つからない。
顔と名前は把握しているが
この仮面をつけた人の山から、ただ1人を見つけ出すのは至難の業だ。
それらしき人物を見かけたら
探りを入れつつ何気ない会話をする。
しかし
特定できかねていた。
初めての失敗が頭を過る。
その時
突然、無線が入った。
『私だ。ターゲットを確認した。お前たち上手く逃げろよ』
声の主はアイリッシュ
少しふざけたような口調だが
どこか緊張感が漂う。
「アイリッシュ今からそちらに『無用だ。私の命令に従え』
慌てて、合流する意思を伝えようとするが
答えはNOだ。
この人混みの中どうやってターゲットをみつけたのか
そして
上手く逃げろとは…
聞きたいことは山ほどある。
しかし
それ以降、いくら呼びかけても無線は繋がらない。
辛うじて最後に一瞬聞こえたのは
ノイズに混じった低い男の声とアイリッシュの声
「Я искал тебя……колдунья」
『Я не очень хорошо собираюсь скрываться.』
微かに聞き取れたロシア語
【колдунья】
意味は魔女
彼女にかけられた言葉
なにか引っかかる…
組織内での通称を何故この男が知っている?
そもそも
アイリッシュがここに来ることは組織のごく僅かな人間しか知らないはず…
まさか
内通者が組織内に?
危険だ。
それなら最初から自分たちは…
ターゲットに踊らされていただけじゃないか!!
【上手く逃げろよ】
やっと
あの言葉の意味を理解した。
アイリッシュは
こちらの情報が漏れていることに気付いていたのか。