第10章 魔女と炎
地獄の業火に焼かれ
罪を数えるのは誰?
アイリッシュ…
組織の魔女と呼ばれ
その実力で組織の中枢を担う女。
今まで
存在は知っていたが
一度も顔を合わせる事が出来なかった。
組織は彼女を相当特別に扱っているようで
コードネームを持たない者や
コードネームを与えられたばかりの者は
彼女に会うどころか彼女の存在すら知らない。
虫を殺すように人の命を奪う組織が
それほどまでに守っている魔女とは
一体、何者なのか…
やっと
その答えに近づける時がきた。
今回のミッションはそんな彼女に近付ける好機だ。
千載一遇のチャンス
もぅ二度と巡ってこないかもしれない。
気を引き締め
組織の魔女と千の顔を持つ魔女
アイリッシュとベルモットが待つ館へと向かった。
自然と脈が早くなる
緊張しているのが自分でも分かる…
このチャンス
失敗は許されない。
ベルモットが指定した時間通りに会場に到着した。
無線で現在地を確認する。
すぐにベルモットが反応した。
あの目立つ2人がそうなのだろう
仮面をつけているため、顔は見えないが
黒のドレスにプラチナブランドの髪はベルモット
白のドレスに噂通りの美しい黒髪は恐らく…
組織の魔女…アイリッシュ
やっと出会えた組織の魔女
しかし
その姿を目の当たりにした瞬間
心が騒ついた。
顔は見えないが
どこか似ていた。
心の底から逢いたいと思っているあの人に…
まさか…
そんな…
そんなはずはない!
あれから20年は過ぎている。
僕が記憶している彼女の見た目からすると
年齢は20代後半あたり
ということは
彼女が生きているとすれば
現在は40代後半
もしくは50代だ。
仮面を付けてはいるが
アイリッシュはとてもその年齢には見えない。
僕と同じくらいの年齢か
少し年上か…
もう少し近付いたら分かるかもしれない…
その距離を縮めようとした瞬間
アイリッシュはベルモットから離れた。
思考が読まれたのか…
それとも
偶然なのか…
私情の絡んだ安易な行動だったと反省する。
あの人の面影が重なるその背中が
離れていく
不思議なことに
咲哉に初めてさよならと言われた
あの日を思い出した。