第3章 魔女と銃弾
鼻を突くほど硝煙の匂いが漂う
アイリッシュの足元には生臭い赤が広がっていた。
その赤に落ちる銃
穴の開いた体はユラリと前方に傾く
「手間かけさせやがって・・・・クソがっ」
部下を全て失った男は悪態をつきながら
止めを刺すように
アイリッシュの頭に銃口を向けた。
『ライ・・・待たせたな』
アイリッシュはボソリと呟いた。
そして
銃を落とした右腕をスッと上げ
ある一点を指差す。
そこには驚愕の表情を浮かべながらも
確実に男の脳天に標準を合わせて引き金を引くライの姿
遠く響く銃声
一つの組織が全滅した瞬間だった。
「あいつ・・・化け物か・・・・」
焦りからか
無意識にこぼれる独り言
ライは急いでライフルを仕舞うと
アイリッシュのもとへと急いだ
あれだけ被弾
致死量の出血
その後
迷いなく向けられた指先
なぜ、立っていられるのか
なぜ、自分の居場所が分かったのか
そんなことよりも
なによりも
この瞬間は
ただ
アイリッシュという魔女が生きていることを
ただ
それだけを祈っていたことに
ライ本人はまだ気づいていない。
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魔女と銃弾 ⑤魔女の合図