第2章 SS
◆ジークフリート
丸窓に切り抜かれた夜空を眺めていた。眠れないのはたぶん、私に迷いがあるから。
風邪を引くぞ、と不意に柔らかい声と毛布に包まれる。
「考え事か?」
「……起こしたのなら悪かった」
口を付いて出るのは無愛想な言葉ばかり。また私は、と自己嫌悪に陥る私の頭を大きな手が撫でる。
「いや、俺も丁度考え事をしていたからな」
こんな無頓着な男でも悩むことがあるのだな、とまた不躾な考えが浮かんだが口には出さなかった。
「毎度星を眺めているお前を見ると考えてしまう。本当はあまり好かれていないのでは、と」
「そんな事無い!」
私も私なりに彼の気持ちに答えたいと、決めたのだから。余裕の無い頭で必死に言葉を組み立てる。
「す、好いてもない、男に……抱かれたりは、しない」
ジークフリートは、私の拙い言葉を噛み締めるように破顔する。
毛布ごとすっぽりと腕の中に収めると、一言。安心した、と頬を擦り寄せる。まるで猫の様な彼は、実は寝ぼけているのでは?と疑うほどに普段の姿から掛け離れていて。途端に生まれる猜疑心。
「……騙したな、卑怯者」
「騙してはいないが……ふふ、俺が狡い大人だというのは認めよう。どうだろう。こんな卑怯者にオヤスミのキスをくれるか、プリンセス」
おどけて目を瞑る彼の鼻を甘噛みし。大嫌い、と私は愛を囁く。