第3章 6つの笑顔
「みんな、今はテツくんの事信頼してるよね。」
黒「今は、そうですけど…。」
私はにっこりと微笑んだ。
「テツくんは、そんなみんなを疑うの?」
テツくんの瞳は、ゆらゆら揺らぐ。
…大丈夫だよ。
「今のテツくんは、信じてくれる仲間を疑ってるんだよ。」
黒「…仲間を…。」
「見えない先の事を疑って、殻に閉じ籠ろうとしてる。」
私より大きいテツくんの手は、冷たかった。
「先の事を考えて、今の仲間から顔を背けてる。」
そんなんじゃ…ダメなんだよ?
「それでいいの?それがテツくんの望む事なの?」
黒「…僕は…。ただ、一人になるのが怖くて…。」
だんだん震えてくる、声。
分かるよ。…一人は怖いよね。
「私はテツくんを一人にしない。だから、みんなの事を信じて?」
「もし、みんながバラバラになったら。私が繋ぎ止めてみせるよ…!」
テツくんの涙が、頬を伝う。
我慢しないでいいんだよ、テツくん。
そっと抱きしめると、抱きしめ返してくれた。
黒「しばらく、こうさせて…ください…。」
「うん。……ありがとう、テツくん。」
黒「……え?」
「辞めないでくれて……ありがとう。」
はい、と笑うテツくん。
そしてイヤホンを手渡してくれた。
…いつ外れたんだろ。
黒「ありがとうございました…。」
その時、耳元からノイズ混じりの声。
『…良かった…。』