第2章 生クリームを鍋で温めます
「有さんってセンスいいですよね」
石鹸で手を洗いながら秋也くんは言った。
「え?そ、そう?」
「はい、この石鹸もいい香りだし」
「あ、それはねえ、お気に入りのブランドのやつなの。いいでしょ、ピンクローズの香り。去年のクリスマスに限定で出たやつなんだ」
「旦那さんからのクリスマスプレゼント、とかですか?」
秋也くんは視線を動かして私を見たけど、私はチョコの大袋をハサミでチョキチョキしていたので気づかなかった。
「プレゼントっていうか、ねだって買ってもらったんだけどね」
「サプライズとかじゃないんですね」
「結婚するまではしてたんだけどね〜、サプライズ。今更しないかな」
上の戸棚を開いてボウルに手をかけると、秋也くんが横から腕を伸ばしてきた。
「高いところのものはオレが取りますから、言ってください」
そうしてスッとボウルを取ってくれた。ワオ、男子力高い。
秋也くんは肘まで袖をまくっているので、前腕がよく見えた。筋肉が張っていて、形のよい腕だ。
「秋也くんって何か部活やってるの?」
「野球部です」
「そっかあ」
納得。