第2章 生クリームを鍋で温めます
「じゃあ、早速作る?」
「はい、よろしくお願いします」
そういう訳で、私は秋也くんと台所に立った。
「メニューはお任せってことだったから、トリュフにしようか。やっぱ簡単だし」
「はい」
「しかし、最近のバレンタインは男の子もチョコを作るものなの?友チョコとかそういうあれ?」
「いえ、これは逆チョコですね」
「逆チョコ」
「はい」
なんのこっちゃ。
「じゃあまず手を洗って〜…」
「エプロンしないんですか?」
「え?エプロン?してもしなくてもいいけど。でも秋也くんの服キレイだから、チョコ飛んだらイヤかもね。貸そうか?」
「あ、実は持ってきてるんですけど。…でも、借りてもいいですか?オレのは家庭科の授業で作ったやつだから、柄が恥ずかしいんですよね。サイズも小さいし」
秋也くんはフニッとはにかんだ。おやおや、可愛い顔もするじゃないの。
「恥ずかしい柄ってどんなの?」
「ええと、宇宙船がピカピカしながら飛んでるやつ、みたいなのです」
なるほどそりゃ年頃の男には恥ずかしいわ。
「でも私のエプロンも男の子には恥ずかしいかもだよ。ピンクのリボンのと、イチゴの花、どっちがいい?」
秋也くんはしばらく考えると、「イチゴで」と答えた。
そんな訳で台所には、ピンクリボンのエプロンを着た私と、イチゴのエプロンを着た秋也くんが並んだのだ。秋也くんはどことなく満足そうに見えた。イチゴなのに。