第2章 生クリームを鍋で温めます
「…で、泡立て器で混ぜてね。うん、そうそう。すごーい上手だね」
秋也くんはカッカッと小気味よい音を立てながらチョコレートと生クリームを混ぜ合わせた。
「普段、家で料理とかするの?」
「はい、親は仕事で遅くなりますし。それにオレ、家庭的な男になりたいんです。家事は一通りできるようになりたいなって」
「すごーい!えらーい!」
「そうですか?」
「表彰モノだよ!うちの人は家事なんてぜーんぜん!これが時代の流れってやつなのかしら?」
毎日ご飯を食べては食器を片付けもしない夫を思い浮かべ、私はため息をついた。
「秋也くんと結婚する女の子は幸せものだね」
そう言うと、秋也くんは少し眉間にシワを寄せた。
「そうですね…。やっぱり、好きな人には幸せになって欲しいですから」
穏やかな呟きだった。