第10章 コーティングしたチョコにココアをまぶします
秋也くんは私の側まで歩み寄ると、寝転がったままの私を見下ろした。
優しく笑っていたけれど、すごく寂しそうだった。
「オレのことを構っていたら、有さん傷つきますよ。だって有さん…何だかんだで旦那さんのこと好きだから。旦那さんもそうですよね。オレわかるんです。大丈夫、旦那さんは有さんのことちゃんと愛してますよ。愛してるのと…抱けるかどうかって、別なんですよね」
「そんな。やだ。私、秋也くんのことも好きだよ」
秋也くんは目を細めた。
「ありがとうございます。その言葉だけでオレは十分です。いいですか有さん、有さんは次に目が覚めた時、今日あったことは全部忘れますからね」
「え…?そんな訳ないでしょ」
「有さん、あれ、あのヌイグルミ、どうしてそこに置いてるんですか?覚えてますか?」
秋也くんはナイトテーブルの上のヌイグルミを指さした。
可愛いピンクのテディベア…。あれ?そういえばあのヌイグルミ、どこで買ったんだっけ?いつから?わからない。
「あれ、オレがあげたんですよ。絶対ベッドの側に置いて下さいって、何年も前に。でも有さん覚えてないでしょう?」
「え…」
「あれね、中にWebカメラが入ってるんです。有さんが旦那さんにセックスを断られたのも…1人でオナニーしてたのも、オレはこれで見てました」