第10章 コーティングしたチョコにココアをまぶします
何?何言ってるの?わかんない。
え、でも、なんで私はあのヌイグルミのこと覚えてないの?
「それと同じです。全部忘れますよ。でも、満足した、愛されたって気持ちだけは残るから…もう有さんは1人で泣くことはないでしょう」
何もわからない。秋也くんは少し遠い目をしたかと思うと、また柔らかく微笑んだ。
「でも、これからも有さんが寂しくなったら、その時はまたオレが来ますからね。何度でも何度でも、有さんが切なくなるたびに、オレが愛してあげます。オレは有さんをとろとろに甘やかして、何にも考えなくていいように、悩まなくていいようにしてあげたい。ああ、そうだ。オレの人生、それだけでいいんだ」
秋也くんの笑顔は、自分を慰めてるみたいだった。
「何言ってるの…わかんない…秋也くん」
「さあ有さん、最後にオレの目を見て」
秋也くんは私に顔を寄せてきた。秋也くんの目が射抜くように私を捉える。
やだやだ。私秋也くんのこと忘れたくない。だって秋也くん、今にも泣きそうな顔で笑ってるじゃない。そんな秋也くんを忘れられないよ。
やだ。怖い。
でも目が離せない。
離せ…な…い…。
「有さん、チョコレートありがとうございました。さようなら」