第6章 冷蔵庫でしばらく冷やします
「お、大人…は…大変…なの…。忙しい、し…。あの人、は…仕事、つかれ…から…」
「そうやってずっと、自分の気持ちを誤魔化していたんですか?」
かわいそうに、と秋也くんは言った。
「旦那さんが自分を女扱いしてくれないことを、認めたくなかったんですよね」
「ちが…」
「時には人肌が恋しくなることだってある。でも旦那さんはそんな有さんを受け入れなかった」
「ちがう…」
「『疲れている』が言い訳でしかないことに有さんは気づいていたでしょう。なのにそれを言い出せなかった」
「やめて…!」
「旦那さんは、もう有さんを”女”として見ていない。この上”人”として嫌われるのが怖かった。そうですね」
「なんでっ!そんなひどいこと言う…」
思わず叫びだしてしまったその時、秋也くんは両手を広げ、ふわりと私の体を包み込んだ。
「つらかったでしょう。でももう大丈夫。オレが有さんを愛してあげますから」
とろけるような、声だった。
どこからか甘い香りがした。
秋也くんはゆっくりと私の体を倒した。トスンと、素直に私の体は倒れた。倒れてしまった。