第6章 冷蔵庫でしばらく冷やします
それからは、何も言えなかった。秋也くんの手は私からエプロンを剥ぎ取ると、プルオーバーを優しく押し上げ、現れたブラのホックをよどみなく外した。私は背を浮かせ、彼の動きに従ってしまっていた。
ホロリとひと粒、涙がこぼれた。
「秋也くん、私…」
「有さん」
「私…はしたない、かな」
「そんなことないです」
「ダメな大人…」
「有さん、そんなこと言わないで」
秋也くんは優しく私の頭を撫で、涙を拭うと、おでことおでこをコツンと合わせた。
「有さん、いいんですよ。泣いてもいい、ワガママ言ってもいい。だけど自分を責めないで。それだけはしないで下さい。有さんは何にも悪くないです。なんにもおかしくないです。愛されたいのは、誰だってそうだから」
ゆっくりと、秋也くんのおでこが離れた。
その熱が惜しい気がして、私は目を見開いて秋也くんを見つめた。秋也くんは柔らかく笑っていた。
「今は、オレに身を任せて」
甘い香りが、またひとすじ。
ああ私。溺れそう。