第5章 チョコをスプーンなどですくい、一口サイズに分けます
「あ、あの…あの…ひぇ」
何とも言えなかった。怖い。震える。
秋也くんはそんな私を見下ろすと、イチゴのエプロンを脱ぎ、いつの間にか持っていたチョコの包みから、またひと粒取り出して見せた。
「食べて」
混乱で涙ぐむ私の口に、優しくチョコレートが押し付けられた。私が口を開くと、すぐにそれが押し込まれる。甘い。あまい。甘いという気持ちが私の脳を支配した。
秋也くんはココアパウダーのついた指をペチョリとねぶると、ベッド脇のナイトテーブルに目をやった。時計、ヌイグルミ、ティッシュ箱…。しばらくそれらを眺めていたけど、やがてティッシュを2,3枚取って手を拭った。
そうしてベッドに手をついて、私に覆いかぶさるように、四つん這いになる。
「有さん、好きです」
ゆっくりと手がやってきて、私の頬にあてられた。私は動けなかった。近づいてくる秋也くんの顔を、ただただ見ていた。やがて何も見えなくなって、秋也くんの口と私の口が重なった。
ぬるくて、柔らかくて、ひたすらに甘かった。
甘い。