第5章 チョコをスプーンなどですくい、一口サイズに分けます
今、緊迫した状況だというのに。どういうわけか私はチョコレートの甘さにとろけそうになっていた。
甘い。甘い、あまい。
なんだろう、これ。すごくあまい。こんなのはじめて。
ふわふわとした心地に包まれて何も言えないでいる私を見て、秋也くんは満足そうに微笑んだ。
そして、ああちょっと、認識しにくいんだけど。
彼はぎゅうっと私を抱きしめたのだ。
「有さん…」
ひえ、うわ。
ああ、どうしよう。
私歳上だから、私しっかりしないといけないんだけど。
どうしたらいいんだろう、秋也くんが凄く格好よく、色っぽく見える。心臓がトクトクトクトク、体を熱くさせる。甘い香りの漂う台所が、私の判断を鈍らせる。
「有さん」
秋也くんは私のことを半ば抱きかかえるみたいにして、ズイズイと廊下まで出ると、いつの間にうちの間取りを把握したのやら、真っ直ぐに寝室に入った。
「ちょ…秋也く、あの!」
視界がグルンとひっくり返り、ボスンと鈍い音。私は秋也くんに押し倒されていた。