第5章 チョコをスプーンなどですくい、一口サイズに分けます
「あの、いや、それは、でも」
「食べて下さい。オレの気持ちが詰まってるから」
「詰まってるからこそ、ダメというか」
ゴニョゴニョ言い訳しながら何とか逃れようとしたけれど、秋也くんはジリジリと近づいてくる。ヤバい。ジリジリ来る。後ずさっていたら、柱に背中をぶつけた。いたい。
「食べて」
う、うお。
近づいてくる。
手が、指が。チョコが。
ひえ。
薄くあけた口を割り開いて、黒いカタマリが侵入してきた。ズイ、と押し込まれ、丸ごと中に収まっても、秋也くんはまだ押し込んでくる。
「ンッ、ン」
指先までねじ入れられた所で苦しさに耐えられなくなり、私は首をよじって彼の指から逃れた。ココアの風味をかき消すように、秋也くんの指の味がした気がする。
「もご、もぐ…」
トリュフを噛むとそれはムニョリと柔らかく、すぐに口の中で溶け出した。甘い、甘いものが口の中を満たし、脳まで昇っていく。
「むぐ…んん。ん…」
甘い…。