第3章 生クリームと刻んだチョコを混ぜ合わせます
お菓子作りよりも白熱したかもしれないラッピング作業は、たっぷり30分以上かけてようやく完了した。
「見て見て!チョー可愛い!ヤバい!」
「凄いですね、本当に」
「これはヤバいよ!こんなの貰ったらめちゃくちゃ喜んじゃうよ!」
「有さんも、これを貰ったら嬉しくなります?」
「絶対なるよ〜!」
秋也くんは目を細めゆるやかに微笑み
「よかった」
と小さく言った。
そうして、豪勢に包まれたチョコレートを大事そうに両手で抱えた。
秋也くんの目はジッとチョコレートに注がれた。
何か深く考え込んでいるのか…と思うと、スウ、ハア、と大きく深呼吸をした。
私はなんとなく、そんな秋也くんを黙って見ていた。ポカンと口を開けて、なぜだか彼から目が離せなかった。
不思議な光景だった。秋也くんはありったけの力をチョコレートに込めているみたいにも見えた。
私は秋也くんに魅入っていた。10秒かもしれないし2,3分くらい経ったかもしれない。
なんか、あんまり見てたら失礼かも?そう気づいた私は、やっとのことで体を動かした。
「あ、か、紙袋とか、あった方がいいよね。なんか可愛いの、とってあったと思う。イヤじゃなければ、それで…え〜とどこにしまってあったかな…」
あれだけのラッピングを買ってきたわりに、秋也くんはチョコを持ち歩くための袋類は用意していなかった。私は秘蔵の紙袋たちを取りに行くため、台所から出ようとした。けど、秋也くんに呼び止められた。