第1章 物語の少し長い冒頭
その日は、引き込み禿の私が、姐様にこいこいされ 内緒で座敷に上がりました。
「こちらの方が、私の姐様を身請けした轟炎司様」
膳が二つと一つ、向かい合わせに並べられた座敷に呼ばれ、私は面食らうと、その赤みがかった髪の人物は鋭い目で私を睨みつけました。
「ひっ」
怒られるのではないかと、思わず口から悲鳴が漏れます。
「大丈夫よすずめ、炎司様は別に貴方をとって食ったりはしないから」
それが私と、轟炎司の初めての邂逅でした。
「俺にもすずめくらいの息子娘がいるんだがどう接してやればいいかわからなくてな。俺が家に帰っても部屋から出てくることさえない。どうにか少しでも話をしたいんだが………どうすればいいすずめ!!」
しかし、お酒を飲むと人は変わるものです。
「この人、いつもこうなのよ。私のところに来ては"冷は何をやれば喜ぶんだ"ってずっと言ってるの。一緒にいてあげることが、一番だって言ってるのに……」
私はこの人が、嫁バカで子バカであることを理解すると、初対面でこの人に持った恐怖心は何処へやら。普通に接することができたのです。