第5章 何が為に
手のひらに残った 紅い手毬。
ああ、バカみてえ。
本当に バカみてえだ。
「ああ、クソっ、クソが!!」
手毬を投げ捨てようにも、それは手から離れない。
あいつが死んだ。
迎えにいくと約束してた。
あいつは別の男と 死んでいた。
わかってる。もう七年も前の記憶だ、忘れていたっておかしくねえ。
傷付く方が馬鹿らしい。
けれど
「俺の今までは、なんだったんだよ!!」
迎えに行くと 約束した。
身請けすると 約束した。
その為に軍に入って、金を稼いで
あいつを
ああ、なんでだよ。
俺は 惨めだ。